日本人の平均的な「介護が必要な年数」は、男性が約9年、女性は約13年。誰だって介護してほしいと思っていません。それはあなたの親も同じはずです。できれば介護なしで、自分の力だけで生きて、一生を終えられればいいなと思っていますが、これが現実です。

健康寿命を考えるうえで、寝たきりや介護になりやすい病気とはどんなものがあるでしょうか。

脳梗塞などの脳血管疾患の後遺症で半身麻痺になり、寝たきり、車椅子生活におちいるケース。次に認知症やパーキンソン病、体力の衰え、転倒による骨折や関節炎です。

これらの病気、疾患の原因は動脈硬化や血栓、新陳代謝の低下など様々ですが、さらに原因を探れば、血液の汚れが血管を詰まらせ、体力の衰弱を招いています。

血液の汚れは乱れた食生活習慣によって腸内環境を悪化させることが原因です。腸に吸収された腐敗物質が腸壁から毛細血管に吸収され、血液内に吸収され、血液内にとけ込んで血液を汚しながら全身をくまなく駆け巡ることで、結果病気になるのです。

腸に吸収された栄養は、その人の血液の質や体質を左右するのです。つまり人の生命、健康に関わる最も重要な場所が腸なのです。

1がん細胞の抑制

長寿者の大便サンプルから特徴的に多く検出されたのは「フェイカリバクテリウム」と「ラクノスピラ」という腸内細菌でした。これらは食物繊維を利用して「酪酸」という物質をつくる「酪酸産生菌」の一種です。

「酪酸」は、がん細胞の抑制、腸粘膜の正常化による免疫向上、腸管機能アップ効果による消化・吸収の促進など、さまざまな健康効果があることが知られています。

2アルツハイマーなどによる認知症の予防

近年、腸内細菌が脳機能にも関係している「腸脳相関」があることが明らかになりました。大腸の健康状態は脳に現れるということです。

腸内細菌が、セロトニンやドーパミンといった脳内神経伝達物質の合成にそのものに大きく関わっていることも明らかになっています。

脳内神経伝達物質の材料となるトリプトファンは腸で作られることがわかっています。腸内細菌がトリプトファンを代謝(化学反応)してつくったセロトニンが門脈を通って脳に達すると考えられるのです。

セロトニンは脳内では、気分を安定させ、穏やかにする役割を担っているほか、睡眠にも関与しています。

大腸で生じた有害物質が血流に乗って脳に達すれば、認知症などの脳疾患を引き起こす可能性もあります。

3腸粘膜の正常化による免疫向上

体を守ってくれる免疫細胞の半数以上は腸に集まっていることが分かってきました。このことを「腸管免疫」と言います。この免疫器官こそ絨毛に張り巡らされている「リンパ細胞」です。

腸の面積は実にテニスコート一面になるほどですが、そこに免疫機能が張り巡らされています。全身のリンパ球の約6割が腸に集中し、抗体の6割が腸でつくられています。

腸は消化器官であることはもちろんですが、最大の免疫器官でもあるのです。

4血管を若くする

血管の若さは長寿の要。動脈硬化は命を落とすリスクすらある血管老化現象です。

腸と全身の血管は、腸に張り巡らされた「門脈」という細かい血管網を介してつながっています。その門脈から全身に至る血管へ入り込み、血栓をつくってしまう腸内細菌や動脈硬化を促進する腸内細菌の存在も確認されています。

逆に動脈硬化を抑制する腸内細菌もいることもわかっています。

腸内環境が悪化して便通が滞ると大腸の血流が悪くなり、結果的に全身の血流まで滞りがちになってしまいます。血流の悪化は血管の老化の一大要因ですから、大腸のコンディションが血管の老化をも左右していると言えるのです。

5長生きで元気になる

「酪酸産生菌」のフェイカリバクテリウムとラクノスピラが食物線維を利用してつくる「酪酸」で腸内を弱酸性の環境に変えます。すると腸管運動が活発になり、お通じがよくなります。

さらに「酪酸」は腸の粘膜を通じて全身にへと運ばれ、細胞の増殖や粘液の分泌、水やミネラルの吸収といった活動のエネルギー源となります。

また、肝臓や腎臓を動かすエネルギーや脂肪を合成する材料としても使われます。

群馬県南牧村は「寝たきりにならな村」と呼ばれる健康長寿村です。そこに暮らす97歳のおばあさんから、酪酸産生菌が100億個も見つかりました。通常は10億個程度ですが、その10倍もの酪酸産生菌が97歳の高齢者から見つかったことから「食物線維が健康長寿の源」と結論づけられます。

最後に

人の体が本来歩むべき道を辿れば、死ぬまで自分の足で歩き、自分の口で食べ、元気に生きることができるのです。これからは食物繊維、発酵食品、水分を積極的に摂り、ストレスを溜めないことで便秘解消、腸内環境の改善に取り組んだ方が良さそうですね。

参考文献

辨野義己著 100歳まで元気な人は何を食べているか

阿部一理著 寝たきりにならない腸づくり